杉本良明の問題解決コーチング|大阪

はじめに・・・

コーチングという言葉を初めて聞いたという人もいれば、コーチングと聞いて「なんとなく胡散臭そうだ」と思う人もいることでしょう。しかし、だれでも必ず「コーチング手法」を日常生活で使っています。

要は質問して答えを引き出せば、それで一応コーチングであるわけです。コーチングだと知らずに無意識に使っているわけですね。

コーチングを意識的に正しく、そして忍耐強く使えば、部下が自発的に考え、自発的に動いてくれる、意欲・活力に溢れた職場をつくることができます。何の変哲もない普通の人材からやる気集団が生まれるのです。ただの小麦粉と卵から美味しいケーキができるようなものでしょうか。

ですから「コーチング」を正しく理解することは、今日ビジネス・パーソンの基本的なたしなみと言っていいと思います。


ビジネス・コーチングとは・・・

ビジネス・コーチングとは何か。もちろん、例外はあるのですが、ビジネス・コーチングとは、コーチング・スキルを使った説得術であると言ってしまっていいと思います。8~9割のケースがこれに相当するでしょう。

コーチング・スキルとは上司が既に答えを持っているのですが、あくまで問いかけて、部下に答えさせる、というものです。

  「君、これはどうするつもり?」

  「それだと、○○という問題がでてくるわね。これはどうするの?」

  「う~ん、その考え方はあまり賛成できんな。たとえばこう考えてみたらどう?」

  「そう、だがまだこの問題は残ってるわね。これはどうするの?」

  「まぁ、そんなとこかな。君ならやれるだろう。いつまでにできそうかな?」

  「じゃあ、しっかり頼むよ!」

単に「○○するように」と指示するのにくらべて、コーチング・スキルを使ったほうが断然やる気が出ます。コーチング・スキルは押し付けや命令がなく、すべて部下が自分で選択し、自分で決めたという形を取るからです。

部下の中には意識は低いし、何も考えていない人が必ずいるものです。と言うより、もともと部下とはそういうもの、と割り切るくらいでちょうどいいのかもしれません。

上司が部下からやる気を引き出すとはどういうことなのか、これはひとえに「納得させる」ことに尽きるでしょう。納得すれば自発的に動きます。何も言わなくても部下が率先して仕事をするとすれば、それは日頃の「納得させる」努力のたまものだと言えます。

部下を納得させるにはやはり説得しかありません。ビジネス・コーチングは、質問型の対話で説得する、というアプローチです。上司と部下の意識の格差を辛抱強く対話を重ねていきながら埋めていく作業、ということになります。

説得は説教とは違います。説得は対等ですが、説教は上からモノを言うことです。説教は必ず背景に「批判」がありますが、説得は「批判」があってはうまくいきません。

説教は上司の権限を行使して命令したり、上司の立場をかさに着て感情的になったり、がありますが、説得は上司の権限や立場を一切使いません。使った時点で「説得」ではなくなるからです。

ビジネス・コーチングは、あくまで忍耐強く説得することです。指示すれば1分で済むことが30分かかるかもしれません。しかし30分後に部下が「納得」していれば、以後自発的に動いてくれるので、30分かける値打ちは十分にある、ということになります。

ビジネス・コーチングは忍耐なのです。


ちょっとアホっぽい会話がビジネス・コーチング

わかっていても問いかける、こうしたちょっとアホっぽい会話がコーチングなのです。そんなこと聞かずともわかってるでしょ、ということを敢えて聞いていく。たとえば、

「○○しようと思うんだが、どんなものかな」

という問いを上司は敢えて発する。その行為が付加価値を生むのです。部下から返って来た答えが:

「それはもう必要ないですよ」

という想定外の内容だったら、何がしかの 改善効果を生みます。また逆に、

「それはこうすればいいんじゃないですか」

という想定内だったら、 部下を納得させる納得効果、部下を教育する教育効果が見込めます。コーチングが浸透している職場は、とにかく話しやすく、コミュニケーションが十分です。そうした風土が目に見えない付加価値、つまり意欲や発想といったものを刻々生み出していく、というわけです。


コーチング・スキルとコーチング

コーチング・スキルとコーチング、私はこの2つを分けて使っています。どう違うのかというと、

●コーチング・スキル:  コーチ側が答えを持っている

○コーチング:           コーチ側が答えを持っていない


大まかな方向は決まっているが、細部が決まっていない場合もコーチングに入りま
す。狙いは異なっていて、


●コーチング・スキル:  相手の意欲を引き出すのが第一の目的

○コーチング:           相手の発想を引き出すのが第一の目的


もちろん意欲と発想は相関関係にあり、意欲を引き出せば発想が、発想を引き出せば意欲が引き出されるわけですが、上記のように単純化できます。

世間でビジネス・コーチングと言っているのは、たいてい「コーチング・スキル」の方です。コーチング・スキルであってもコーチングであっても、外から見ている限りは同じに見えます。では具体的にどう違うのかというと、


●コーチング・スキル:  あたかも相手が自分で発想し、自分で選択したかのように
               錯覚させる

○コーチング:           相手が自分で発想し、自分で選択する手助けをする


上司と部下でともに解決策を練り上げるという場合はコーチングに入ります。以上をまとめると、

●相手のレベルが低ければ、コーチング・スキル

○相手のレベルが高ければ、コーチング


つまり相手のレベルに応じてコーチング・スキルとコーチングを使い分ける必要がある、ということです。相手の成長に伴なって、コーチング・スキルから本物のコーチングに進化していくのがあるべき姿です。レベルの高い低いは相対的なものであり、良い悪いと短絡しないでくださいね。

世の中ではコーチングと称していますが、実際はコーチング・スキルどまりのケースが多くあります。たとえば「子育てコーチング」「教育コーチング」などといったものはコーチングの要素がまったくゼロでないにせよ、実際はコーチング・スキルでしかないわけです。

日本ではコーチングは、まずマネジメント手法としてマスコミで紹介されました。その結果、コーチング=コーチング・スキルといった皮相な見方が蔓延しているように思います。コーチング・スキルというのはコーチングを意欲の引き出しに限定して応用したもので、コーチングの一部ではありますが、すべてではありません。コーチング・スキルとコーチングに分けて理解すれば、より正しくコーチングが理解できるでしょう。


価値観の調整

・組織の構成員は組織の方針・目標に忠実でなければならない

のです。たとえば売上10パーセントアップが目標、と言い渡されて、いや反対です、せいぜい現状維持がいいところでしょう、ではハナシになりません。そんな無茶な、をなんとかするのがビジネス・コーチングです。じゃあ、10パーセントを達成するにはどうすればいいか、で始まるのです。

さて、中間管理職のあなたはどうしますか?そもそもあなたはこの目標に納得できますか。もしかしたら「上層部が勝手に決めた数字でいい気なもんだ」と思うかもしれません。あまりに現実離れした数字なら、異を唱えるのは当然必要です。しかし達成できない理由を主張してとことん食い下がっては却ってあなたの評価をさげてしまうでしょう。

こんな場合はどうするか?たとえば、「目標とはめざして掲げるものであって、必ずしも確実に達成できるものでなくてもよい。その方向に向かって精一杯努力すればいいんだ」とあなたなりに咀嚼することが必要です。この「咀嚼」とは会社の価値観とあなたの価値観を調整することです。ここで言う「価値観」は考え方の体系という意味です。

さて、あなたがこの方針を下達すれば、おそらく部下はそんなの無理です、と言うことでしょう。また声に出して反論しなくても、白けているかもしれない。上司であるあなたも同じことを感じたわけですから、これは当然であるわけです。

この状態でいかに部下と戦術を論じようとしても、ハナシは前に進みません。仮に進んだように見えても、部下が納得できていなければ、空論であるに違いありません。これは問題は戦術以前の「価値観」(考え方)にあるからです。

この場合はあなたが部下のために自分の「咀嚼」を提示し、会社の価値観と部下の価値観を調整する必要がありますね。もしかしたら部下が必要な「咀嚼」はあなたが必要だった「咀嚼」とかけ離れているかもしれません。

ビジネス・コーチングとは戦術を論じる以前に、上司と部下が同じ土俵に立つこと、すなわち価値観をそろえること、が不可欠です。そして価値観をそろえるにはそれに見合った人間力(EQ)が必要なわけです。

コーチング・スキルは大切ですが、単にコーチング・スキルだけではビジネス・コーチングはうまく行きません。巷間の書物にはこういったポイントがあまり触れられていないように思います。


コーポレート・コーチングとは

ビジネス・コーチングは上司が部下をコーチングすることです。

このほかに上司と部下の間にほかに社外の専業コーチが介在するケースがあります。これをコーポレート・コーチングと言います。まぁ一種の研修屋さんですね。目的はモチベーションの向上です。

たいていモチベーション研修というのは集合研修です。わたしもその昔は高野山で「○○○訓練」を受けました。しかし、こういった集合研修は期間中精神が昂揚しても、終われば元の木阿弥になるのが普通です。

だからコーチングという形で、ふだんも定期的にカツを入れよう、という試みがあっても今日おかしくありません。古いタイプ上司のばかりで、体質改善の必要な企業はやはり存在するでしょうし、その場合、コーポレート・コーチを投入するという選択肢も当然あると思います。

さて、コーポレート・コーチングはビジネス・コーチングと言えるのでしょうか。これはYESアンドNO、といったところでしょう。

相手が上司ではなく社外の人間であれば、仕事そのものの話題を離れて、上司が合わない、仕事が合わない、職場が合わない、会社が合わない、といった声が必ず出てくるはずです。つまりコーポレート・コーチは会社のニーズと個人のニーズの共通部分を抽出して調整し、できるだけ前向きに仕事をしてもらう、という役割を担うわけですね。

言ってみれば、ビジネス・コーチングとパーソナル・コーチングの折衷的なものでしょう。

が、あくまで仕事のニーズと個人のニーズを調整するだけのコーチングですから、本物の自己実現を目指すコーチングからすればずいぶん中途半端ではあります。コーチは会社から報酬をもらっているわけですから、基本的には「会社の犬」です。しかし社員の不平不満は「守秘義務」で会社に筒抜けにならないようにプロテクトし、人知れず社員のモチベーション・アップに尽力するわけです。

とはいえ、こういった形態で介入すれば、会社の業績にも個人の自己実現にもそれなりの効果が出せることでしょう。社員への福利厚生の一環と言えないこともないですね。

コーポレート・コーチングは研修屋さんの新形態と考えれば理解しやすいと思います。


外的コントロールの排除

ビジネス・コーチングのセミナーを受けた人で、たまに「コーチングはダメだ。あんなもの使えない」断ずる向きがあります。これはセミナー講師が悪いから起こる現象です。世間では講師の多くが「コーチングは会話術」と紹介しています。そんな説明をされたら、その「軽さ」「臭さ」「幼稚さ」に呆れかえって、閉口するのがむしろ当然でしょう。

外的コントロールを排除する、そのために質問型のコミュニケーションを使う」

ビジネス・コーチングと言っても要はこれだけのことです。考え方をキッチリ押さえれば実に簡単です。

ポイントは一にも二にも「外的コントロールの排除」、これに尽きます。極端な話、外的コントロールの弊害が理解できたら、コーチングの理解なんかどうだっていいのです。コーチングは「外的コントロールゼロ」をサポートする手法だと言ってもいいくらいだからです。「外的コントロールの排除」ができれば、職場のコミュニケーションは上司の人間力だけの勝負となります。

世間ではまだまだ多くの人が「外的コントロール」を信奉しています。私自身も外的コントロールを長い間正しいこと、と理解していました。十分人間力のある人が、外的コントロールについて誤解しているため、ストレスに満ちた職場運営行っているというのは、まだまだ多いと思われます。コーチングのセミナーの意義はと言えば、「外的コントロールを糾す」、この一点に尽きると考えます。それさえできたら、会話術なんて何だっていいのです。

職場のコミュニケーションがうまくいかないとすれば、

1. 外的コントロールがあるか
2. 上司の人間力が足らないか

のいずれか、と断言していいでしょう。

外的コントロールがないのに職場のコミュニケーションがうまく行かないとすれば、もう原因はただひとつ、上司の人間力が不足している、ということです。これはコーチングを習っても解決にはなりません。人間力は時間をかけて、総合的に身につけるしかないわけです。


他人のふんどしで相撲を取る技術

コーチングはいろいろな定義ができるのですけれど、ひとつの切り口としては「他人のふんどしで相撲を取る技術」と言うことができます。

私は経営者を含むビジネス・パーソンを20名ほどコーチングさせていただいておりますが、20名の業務を必ずしも熟知しているわけではありません。それでもコーチングできていて、クライアントさんはお金を払ってくださるわけです。

ですから、コーチングは「他人のふんどしで相撲を取る技術」と言うことができるのです。

ただし、私も自分の職歴で仕事をそれなりに極めてきておりますし、下積みから始まってマネジメントに至るまで、あらゆる人間関係の葛藤を経験してきています。この経験から類推して説明をすれば応用がきくわけです。

コーチングといえどもコーチする側が「一芸を極める」必要は必ずあります。一芸がコーチング能力のコアになるわけです。例えば、学校出たての若者が、いかにコーチングを学んだところで、海千山千のビジネス・パーソンのコーチングは難しかろう、というしかありません。

以上から言えるのは「落下傘降下」人事にはコーチングがぴったりということです。

たたき上げでその部署の長になるのではなく、他の不慣れな部署に長として赴任することを、俗に「落下傘降下」人事と呼びます。

赴任先では、

・部下の方が仕事ができる

・部下がすべてを把握している

状態です。

この状況下で部下をマネジメントしていかなくてはならないわけです。当然何でもかんでも自分で把握しようとしても無理です。部下に任せて、部下に考えてもらわなければなりません。ただ長として配属されるほどの人です。自分がこれまでやってきた仕事に対しては、プロとしての誇りを持っているに違いありません。つまり「一芸」を持っているわけですね。

だから、コーチングは落下傘降下人事においては必須のスキルであるのではないでしょうか。赴任当初は部下から仕事を教えてもらわなければならないのですから。

コーチングは、部下に任せて考えさせる、他人のふんどしで相撲を取る手法です。そして他人のふんどしで相撲を取ることを恥とせず、むしろ部署のパーフォーマンスが最大化できるのをもって良しとする手法でもあります。

寡聞にして「落下傘降下にはコーチング」というキャッチを聞いたことがありませんが、そういった環境でやっていくための唯一無二の方法ではないかと思います。

カルロス・ゴーン日産自動車社長がマネジメント手法にコーチングを使ったのは必然であるわけです。


最後に・・・

どうですか、ビジネス・コーチングに興味を持っていただけましたか?決して口先だけのテクニックではないことがご理解いただけたと思います。

さて、ビジネス・コーチングはコーチングの一分野です。できたらビジネス・コーチングだけではなく、コーチング全体を学んでみませんか。

個人セッションの詳細に関しては筆者の運営する下記サイトをご覧いただけますと幸いです。

杉本良明の問題解決コーチング

希望される方は体験セッション(無料)を受けていただくこともできます。またセミナーの依頼も随時お受けいたしております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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